ゴム紐・平ゴムのゴム糸(DCY)のスリップインについて説明します
ゴム紐(ゴムひも)や平ゴムの不良の製品不良、品質不良の1つにスリップイン(Slip-in)があります。
特に織ゴム、編ゴムやコールゴムのような平ゴムで起きる場合が多いです。
(稀に丸ゴムでもスリップインは起きる場合があります。)
上の画像は、織ゴムのスリップインによる製品不良の1例です。
両端のゴム糸が、織ゴムの切り口からゴム糸が、引っ張られて中に入り込んで周りのゴム糸よりも長くなってしまったため、波打っているように見えるのです。
平ゴムの中側で起こると、長くなったゴム糸の部分が、凸凹して、まるで、ミミズが這ったように波打った筋となります。
(両端の風合いも少し硬いです。)
特に、発生しやすいのは、ゴム糸にカバーリング(巻糸)がなされていないようなベア(裸)のゴム糸を使用した平ゴムです。
(ゴム糸に、カバーリングがしてあれば、カバード糸が経糸や緯糸と絡み合う(糸と糸の摩擦力の)ため中に入り込むことがし難く、余程、経糸密度が小さくない限り(糸やゴム糸が密集せず粗く製造しない限り)スリップインはしない傾向にあります。)
スリップイン(Slip-in)とは?
フリーの状態で伸ばされていない平ゴムでも、平ゴムの中に入っているゴム糸や弾性糸(DCY)は、もともと応力が掛かって伸ばされているので、(経糸・緯糸・カバード糸のそれぞれの摩擦力によるグリップ力が弱いと)ハサミで切ると、その断面部分(切り口)からゴム糸が、縮んで、平ゴムの生地の中へと入りこもうとします。
そのため、先端部にゴム糸が無くて、経糸、緯糸のみの生地の状態の部分が発生する場合があります。
その現象を、石川県かほく市のゴム紐業界の人々は、スリップイン(Slip-in)と言います。
スリップインとは、平ゴムなどのゴム紐をハサミ等で切った時に、その切り口からゴム糸(弾性糸)が(ゆっくりと)中側に入り込んでしまう現象です。
スリップインをすると、(入り込んだ部分では)ゴム糸が通常に比べて長くなるので、波打ってミミズが這ったようになります。
そして、ゴム糸が移動して無くなってしまった部分は、ただの生地のようになってしまい、(弾性糸がないので)全く伸びなくなります。
スリップイン(Slip-in)を防ぐためには
(1)ゴム糸は基本的にダブルカバーリングしたもの(DCY)を使用する。
(グリップ力が増し、弾性糸(ゴム糸)が生地の中へ入り込むのを防ぎます。)
(2)経糸や緯糸の密集度(経糸密度や緯糸密度)を上げて、ゴム糸(DCY)をしっかりグリップする。
(3)できる限り緯糸での締め付けをしっかりして両端のゴム糸(DCY)が生地の中へ入り込みにくいようにする。
(4)ゴム糸をあまり引っ張り過ぎて平ゴムを製作しない。
(生地の中へ入りやすいだけでなく、ゴム糸やDCYの入り率が悪いと、早期の劣化の原因にもなります)
(5)完全にスリップインを防ぐには、DCYのカバード糸や経糸・緯糸に長繊維の糸ではなくて、スパン糸(短繊維・紡績糸)を使用するとよいでしょう。
(繊維同士が絡み合うので生地の中へ入りにくくなります)のような方法が考えられます。
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越野勤(こしのつとむ)は、石川県かほく市にある1935年創業で88年の歴史のゴム紐製造販売の有限会社津田産業直販部(かほく支店)の営業部長・問合せ担当で、サイト運営者・著者・ゴム紐の権威、専門家・ゴムプロ:gomuproです。
年齢は66才です。(2024年現在)
1980年に信州大学繊維学部繊維工学科卒業で、大学時代の4年間は、糸や繊維、ゴム紐、織物・編物・製紐・染色・プリントの勉強をしました。広幅織物製造工場で、撚糸、整経、製織等。細幅織ゴム、編ゴム製造工場でカバーリング、生産、染色、品質管理、生産管理、在庫管理の作業等。製紐工場で製紐を学び、営業、インターネット販売をするなど、約55年間ずっと、繊維業界で企画・製造・販売・マーケティング(販促)の仕事を経験してきました。
現在、㈲津田産業直販部でゴム紐の企画、製造販売、マーケティングを担当しています。(約5年間)
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